コラム

COLUMN

2021.11.16

製品開発秘話

ビール向けシリカの開発

ビールの色合いは味わい

今の時代、気の利いたパブなどに行くと様々な色合いや味わいのビールに出会えます。ピルスナーやヴァイツェンの淡い色合いは心地いい香りや喉越しをイメージできますし、スタウトのような濃い色合いは落ち着いた濃厚な味わいをイメージする方も多いでしょう。ビールにおいて色や透明感、泡のきめ細かさなどの見た目は味のイメージに大きく影響を与えます。実はシリカゲルも、そんなビールのイメージ向上に役立っています。

 

透き通ったビール

太陽や照明の光でキラキラ宝石のように美しく光るビール。そんなきれいなビールをつくりたい、醸造家の希望実現は古くから様々な方法で行われてきました。近年においても様々なろ過方法の使用であったり、蛋白質分解酵素の使用であったりと………。しかしながらそこにはいつも香味とのバランス駆け引きであったり、泡持ちの犠牲であったりと様々な問題との戦いが存在したのです。香味や泡持ちに影響を与えずに、濁りをコントロールする便利な素材は無いか?

 

サイロピュートの試作検討へ

40年ほど前、当時の富士デヴィソン化学(弊社:後に富士シリシア化学)は「食品添加物 ろ過助剤」という新しい分野にアプローチしていた。同じころ国内ビール会社もビール製造に合ったろ過助剤を探していた。ビール会社とシリカゲル素材メーカー、両社の未来への希望は、まさに同じ方向を向いていた。

ビールの濁り原因は様々ある。もっとも代表的なものは、原料の麦やホップ由来の蛋白質とポリフェノールが結合したものと言われている。蛋白質かポリフェノールのどちらかを減らせば濁りが起きにくくなる。当時の日本国内で一般的に使用されていたのはタンパク質分解酵素であった。蛋白質を分解することで濁りの原因を減らすことができる。しかしある種の蛋白質はビールの泡持ち維持にも関与していた。

濁りの原因となるたんぱく質と、泡持ち維持に関与する蛋白質は分子量に違いがあることがわかっていた。シリカゲルの最も大きな特徴である多彩な細孔構造、これをコントロールすることで濁りの原因蛋白質だけを取り除けないか?

サイロピュート試作検討の始まりである。

 

開発、決断、継続そして未来へ

開発は当時の研究部と本社工場でスタートしました。粒子サイズと細孔サイズのコントロールを中心に様々なサンプル試作を行い、ビール会社での製品評価も併行して行われました。そして、できた製品がサイロピュート342と30の2グレードでした。

その後はろ過性を中心に改良、サイロピュートのベストセラーとなる#130へと進化していきます。

製品の供給に関しては日向工場が中心となりました。日向工場ではサイロピュートではなく別の製品を生産するライン計画が進められていました。しかし当時の社長高橋の決断により急遽計画を変更し、日向工場はサイロピュート優先の生産ライン構成となったのです。この決断により日向工場はのちのサイロピュート大量需要に対応でき、サイロピュートは富士シリシア化学の中心商品へと成長していきます。

その後も、研究部の後進部署である技術開発部と日向工場が中心となり、市場変化対応のための製品改良は続けられました。ビール会社との共同開発により高性能グレードの#230、さらにはクロスフロー対応商品の#230CWへと続いていきます。商品開発は今まさにこの時も継続しており、

ここにも会社の方針である

ONE CUSTOMER ONE GRADE の精神が生きています。